僕と彼は腐れ縁で、そして僕は彼に嫉妬していたらしい⑥

SS(ショートストーリー)
⑤の続きです

高校時代、僕と彼はそれなりに仲が良かったと思う。

同じ卓球部に所属し、部活が終われば一緒に自転車で帰る。たまに寄り道をすることもあった。

帰り道では、他愛もない話をしていたと思う。


小学校は同じだったものの、当時は接点がなかったから、小中学校時代の思い出話もあれば、高校でのクラスの話もした。

特別な話をしていたわけではない。
本当に、どこにでもあるような高校生の会話だ。

少なくとも、彼と一緒にいる時間の居心地は悪くなかった。

中学時代、彼は僕にとってただなんとなく、羨望の対象だった。

運動ができて、周囲からも慕われていて、彼女もいた。

そんな彼と同じ高校に進学したわけだが、高校時代の僕は、さして彼に対して特別な感情を抱いていたわけではなかった。

少なくとも、嫉妬や羨望していたという自覚はない。

当時の僕は、自分のことで精いっぱいだった。

周囲の人間関係に目を向ける余裕もなかったし、そもそも見ないようにしていた。

周りから受け入れられなかった僕には、そうする以外の選択肢がなかったのだと思う。

休み時間にはライトノベルを読み、二次元の世界に没頭する事。
それが当時の僕にとって、救いだった。

そんな塞ぎ込んでいた僕も、9月頃になると少しずつ考えが変わってきた。

もう遅いかもしれない。
そもそも高校選びから間違っていたから、何も変わらないかもしれない。

それでも、何もしないまま高校生活を終えるのは嫌だったのだろう。

ただ、普通に楽しみたかった。
友達と遊んだり、文化祭を楽しんだり、恋愛をしたり。

いわゆる「青春」というものを、自分も経験してみたかったのだと思う。

そして、その中でも女子との関わりは、僕にとって大きなウェイトを占めていた。

そして僕は彼にこんなことを話した。
「A、やっぱり僕、また頑張ってみるよ。女子とも話したりとか」

「うん、それがいいと思うよ。がんばれ。」

そんな会話をしたのを覚えている。

〇〇

そして、人生で初めての文化祭が近づいてきた。

「うーんどうしよう」担任は困っていた。

なかなか立候補者がおらず堂々巡りであった。

うちの高校の文化祭は、クラスの代表者2名を選出(立候補)して店長を決めるのだが、うちのクラスはやりたい人がいないようだった。


「なあ、A…。文化祭の店長、一緒にやらない?」

僕はこれを機に、クラスの人たちと関わりを持てるかもしれないと思った。
もしかしたら女子とも接点ができるかもしれない。
そんな目論見があった。

そこで僕は、彼を誘った。

「おお、いいよ」

今更だが、これで快く一緒にやってくれる彼は本当に凄い。
僕が逆の立場なら、きっと面倒くさがって断ったろうに。

彼も彼で何か思うところがあって、この提案に乗ってきたのだろうか?

〇〇

クラスの出し物はストラックアウトだった。

ストラックアウトの的を作ったり、ダンボールで装飾を作ったり

店長という立場だったので、クラスメイトへの指示出しなどもしていたはずだが、
あまり覚えてはいない。

もしかしたら彼が全部やってくれたのかもしれないが。

そして結論から言うと、店長になったからといって、何かが変わることはなかった。

ただひたすら、面倒な雑務が増えただけで、女子との関わりなんてものも、全くなかった。

当時、文化祭実行委員の男女とも接点が持てるかもしれない、なんて期待もあったのだが、そもそも仕事の領域が全く違った。

〇〇

文化祭当日。

僕と彼は二人で中心となってクラスを回していた……と思う。

どういうシフトだったのかも定かではないが、僕と彼の負担は明らかに多かった。

仕方ないのかもしれないが、朝から夕方までほぼ動きっぱなしだったことは覚えている。

僕は早々に後悔していた。

これでバイト代でも出ればまだマシだが、流石にメリットがない無賃労働は堪えた。

もう二度とやるものか。
動き続けながら、頭の中ではずっとそんなことを思っていた。

〇〇

文化祭の途中、うちのクラスにAの彼女が遊びに来た。

僕も当然同じ中学ではあったが、彼女と面識がなかったため、二人の様子を遠巻きに見ていただけだった。

すると、クラスメイトの男子が彼に声をかけた。

「あれ、あの子美人だったな。Aのトモダチ?」

彼女ではなく、なぜ友達認定なのだろう?

あのような美人が、まさか彼女とは思わなかったのだろうか?
そう考えるのは、捻くれすぎだろうか。

彼は「彼女だよ」とはっきり答えず、なぜか濁していた。その理由はわからない。ドヤ顔で言ってやればいいのに。僕ならそうするね。

ちなみに、僕は彼女を素直に美人だと思った。(一瞬しか見ていないが)
中学の時はそう思わなかった気がするが。


さて、僕の通っていた高校には「〇〇(高校)マジック」という言葉があった。

校則が厳しく、髪型や制服、メイクなど昭和並みに制限されていたこともあり、

これは男子にも言えることかもしれないが。

とにかく、他校の生徒がやたらと美女に見えてしまう現象だ。

顔立ち自体は、そこまで変わらないのかもしれないけれど。やはりオシャレできないことは、大きなデバフである。

そして僕も例に漏れず、〇〇マジックにかかっていた。

だからなんだって話だけどさ。

〇〇

文化祭の後に残ったのは、やり切ったという感覚もあったが、それ以上に「疲れた」という感情だった。

結局、店長をやって僕が得たものは、この環境では僕が何をやったところで無意味だということだった。

まあ、やらない後悔よりは、それがわかる方がマシかもしれない。

僕はますます絶望し、底の底へと、堕ちていく。

大袈裟かもしれないが、何をどうやっても八方塞がりの感覚だった。

〇〇

このあと、文化祭の打ち上げをやるらしい。

僕はきっぱり、参加しないと答えた。
何もしたくなかった。誰とも関わりたくなかった。

家に帰ると、LINEにメッセージが来ていた。
クラスのDQNからだ。

「Aが、来て欲しいって言ってるんだけど、こない?」

僕は丁重にお断りした。

その時の僕には、誰かの言葉に耳を傾ける余裕なんてなかった。

けれど、彼はいい奴だと思った。

⑦に続く

タイトルとURLをコピーしました