前回の続きです
第3話「3年生の引退を皮切りに」
「どうも…」
「おまえらも、卓球やりにきたんだ」
「まぁ、うん」
同じ部活の仲間だが、なんともそっけないやりとりである
実際、部活でもあんまり話すことはない
僕たち1年男子卓球部は、大きく分けて2つのグループに分断されていた
単純にそれぞれ出身小学校が違うというだけだが
Iくんや僕を筆頭とするY小学校出身の5人(主に僕たち仲良しグループ)とO小学校出身の6人だ
O小学校のメンバーは、コドセンのテリトリー(学区)内だったこともあり、日頃から卓球に触れていた
いわばほとんどラケットを握ったことがない僕らとはスタート時点でアマチュアとプロほどの差があったのだ
そんなわけで、「お前らY小学校組とは格が違うんだぞ」という意識を感じていた
それか僕が勝手に劣等感を感じていただけかもしれない
彼らの中には小学校からクラブチームに所属している者もいたのだから、しょうがない
「あー、じゃあ交代制でやろうか」
一緒に打つわけでもなく、僕たちは台を交代で使うのだった
〇〇
夏。3年生の先輩が引退した
インターハイ予選 地区大会 男女共に団体戦3位
県大会は、初戦敗退
あんなに強かった先輩達でも敵わない相手がいることを知って、僕は戦慄した
たとえ地区大会を勝ち上がれても、県大会で勝つことはさらに難しい
それはそうだ。みんなそれぞれの地区で天下を取ったチームばかりが集まるのだから
県大会を突破しても、次は関東大会。関東大会を突破しても全国大会がある。なんだか眩暈がした
「まあ、僕には関係のない世界なんだけどさ」
〇〇
3年の先輩が引退すると、O小学校出身のエリートたちが頭角を現し始める
瞬く間に2年生を追い抜き、団体戦でレギュラー入りする者も現れ始めた
3年生の先輩たちはベンチも含め全員3年だったことを考えると、結構異例なのかもしれない
ちなみに、中学校の団体戦ではレギュラーは6人である(2010年当時)
「すごいな〜あいつら。1年でレギュラー入りって」
「でも仕方ないよ。T(O小学校組のエース)の父親は過去に関東大会に出場したとか聞いたよ。なんというか、モノ(才能)が違う」
僕たちY小学校組は燻っていた
というより、そこまで勝利に興味がなかった(フリをしていただけかもしれない)
闘志がないというか、もはや別世界の出来事のようにさえ思えたからだ
「あ、今日Iの家でゲームしない?」
「「「いいね」」」
コドセンで卓球をやることもなくなっていた
〇〇
1年の秋頃、学年別の団体戦が行われた
夏の総体は学年による区分けがないのだが、学年別で行われる大会もあるようだ
実力で言えば、団体メンバーに選出されるのはO小学校出身の6人となる
でも、最後の1人に選ばれたのは僕だった
④に続く
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