前回の話の続きです
第2話「卓球部とはなんだったんだろう」
僕の直感は概ね当たっていた
「卓球部」という部活は、運動部界において全くの権力を持たない
簡単に言うと「卓球=ダサい」という風潮が世間にも学校内にも確かにあった
「動く文化部」「根暗スポーツ」「運動音痴」「非モテ」みたいなことはよく言われていた(特にインターネットでよく見かけた)
また、その全てがデタラメと言い切れないのが悲しいところである
〇〇
古来より、公立中学校における運動部の「強さ」は顧問ガチャによって決まる
練習熱心で技術のある人が顧問ならその部活は強くなるし、逆もまた然り
そんな運否天賦で部員たちの将来の実力も変わってくる
スポーツを始める段階では特に、指導者の存在が本当に重要だ
良い指導者に恵まれず、才能を開花できなかった埋もれた天才だって日本中にたくさんいるんだろう。そう思うとなんだか不憫である
まあ、僕はどっちかというと指導者には恵まれていた側の人間なのかもしれない
入部してみると、顧問の先生は今時では珍しい熱血コーチといった具合だった
怒鳴るし、暴力的だし、暑苦しいしで嫌いだったが、卓球の実力と指導力は確かにあった
〇〇
「なあ…」
「おい、聞こえてるだろ」
並走しているIくんが、僕に話しかけてくる
只今絶賛走り込み中である。というか入部してから1ヶ月経つが、未だにラケットを握らせてもらってない
走り込み、筋トレ、ボール拾い
それが僕たち新入部員に与えられた練習であった
ここは卓球部とは名ばかりの陸上部だったのだろうか(先輩たちは普通にボール打ってるけどさ)
「…話しかけないでよ、先生に見つかったら怒鳴られる」
僕は、顧問の先生に目をつけられることをただひたすらに恐れていた
「大丈夫。今日は月曜だから、職員会議がある。しばらくは来れないよ」
Iくんは普段はアホだが、時々知恵を働かせては機転を効かせる男だった
「そか…それで、どうした?」
「今週の土曜の午前練終わったらコドセン行こうぜ」
コドセンとは「子供センター」の略で、地域によって呼び名は多少変わるだろうが、要は児童センターだ
そこには卓球台が2台あるため、自由に使わせてもらえるらしい
「部活で卓球できないなら、そこでやろうぜ」
「あぁ、それいいね」
正直なところ、僕は卓球があまり好きではなかったが、Iくんは結構楽しんでるみたいだった
〇〇
土日の練習は大体、午前練(8:30-12:30)か午後練(13:00-17:00)の2パターンだった(たまに1日中の時もあった)
今週の土曜日は午前練の日だったので、午後からコドセンでIくんと卓球をすることになっていた
自転車を漕ぐ事5分、コドセンにたどり着く
「あー!くそっ!」カコンカコン
建物に入ると。先客がいるようである。既に2台とも使われていた
「あ、」
その顔ぶれは、同じく卓球部に属する同級生たちだった
③に続く
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