※前回挙げていた本稿に載せ損ねた文章があったので、こちら修正版の再投稿です。
思いのほか、僕の高校デビューは成功したのだと思う。
いわゆる、「クラスで一番目立つグループ」とやらに、僕は属していた。
けれど、どこか違和感があった。
今でも思い出す。
ここでの会話が、まあ、楽しくないのなんの。信頼もなく、会話は常に上部。そりゃあ自分を取り繕っている上に、知り合って数日しか経っていないのだから、当たり前といえば当たり前なのだが
「なんだこれは。これが僕の求めていたものなのか」
つまらなかった。
それに、周りの人間の、彼に対する態度と、僕に対する態度が、何か違う気がした。
みんな僕に対しては、そっけないというか。
何を言っても、「へぇ」とか、「そうなんだ」と興味なさそうに返されるような。会話も盛り上がらない。
話していても、皆つまらなそうに見えた。
僕はここにいてはいけない人間なのだろうか?という思考に支配される。
それが自分の思い込みなのか、事実なのかは確かめる術がなかった。
彼と一緒にいれば、自分も周囲から認められるのではないかと、そんな他人頼りの期待もあったのかもしれない
だが現実は、僕自身が彼と同じように受け入れられるわけではなかった。
〇〇
「いいの? 私なんかで。だって、〇〇くん、イケメンだし」
人生で初めて彼女ができた。
彼女のことを好きだったわけではない。とにかく「彼女」が欲しかったのだ。
中学時代、多数から認められなかった僕は、自分に自信が持てなかった。
けれど、この言葉を聞いて、少し自信が持てたのかもしれない。
僕は本来、こんな扱いを受けるはずがないと、心の奥底では思っていた。それは恐ろしいほどの執着だ。自分には価値があると思いたかったのだと思う。
付き合うことになったのも、搦手というか、真の実力ではない。というか、たまたまだ。
高校入学前、mixiで新入生にコンタクトを取っていたところ、向こうからメッセージが来たのが、知り合うきっかけだった。
送られてきたのは、当時流行っていたモバゲーの勧誘URLのようなものだった。
リンクを踏んでアプリをダウンロードすると、送り主に報酬ポイントが入る。そんな仕組みだったと思う。
「なにこれ?(笑)」
気まぐれに、そう返してみた。
すると向こうは「間違えた、ごめんね(笑)」なんて送ってきたので、そこから会話を展開していった。
言ってしまえば、顔も知らないような人とやり取りをして、実際に会って、付き合う流れになったのだ。
高校で彼女を作った、というよりは、ネットで彼女を作ったという方が正しいのだろう。
こうして僕は、彼と同じく「彼女」ができた。
〇〇
「私、今まで5人と付き合ったんだ」
「あぁ、そうなんだ」
「けどね、その中には本当に一瞬しか付き合ってない人も含まれてるからね!」
何気なく、過去の交際歴を聞いてみた。
平静を装っていたが、中学3年生の時点で交際歴が5人と聞き、少し、というかかなり驚いた。
僕が知らないだけで、みんなそんなものなのだろうか。
彼女に対する見方が変わった。悪い方向に。
さらにその流れで、彼女が性行為を経験しているという事実を知る。
正直引いた。同時に、恐怖した。
中学3年生で、そこまで経験していることが。
表向きは変わらずにいたが、僕の中で彼女を見る目は酷く冷めたものに変わっていた。
〇〇
女性から直接的に攻められたのは、初めての経験だった。
僕は動揺した。
心臓がバクバクする。
自分が何をしたのか、具体的にはもう覚えていない。
どうやら、僕が取った何気ない行動が、お気に召さなかったらしい。
ただ彼女から責められたことと、険悪な雰囲気になったことを覚えている。
人から攻撃されると、たとえそれが物理的な暴力でなくとも、これだけ締め付けられることを知った。
そうして1ヶ月もしないうちに、呆気なく彼女と別れた。
そもそも搦手で得た彼女だ。前提が間違っていた。認識の違いやズレもあっただろう。
別れ自体は、別に大したことではなかった。
けれど、クラスでの人間関係も思い通りにいっていなかった僕は、塞ぎ込んでしまった。
慣れない環境で気を張っていたのもあり、疲れてしまったんだと思う。
「もう二度と彼女は作らない。それで、友達もいらない」
…そうだ、今までと同じ場所にいこう。
アニメを見よう。
学校に行きたくなくて、次の日は仮病を使って休んだ。
親の前で号泣したのは、何年振りだったろう。
〇〇
休んでいる間、必死に考えた。
これからどうしたいかを。
短絡的に、この高校を抜け出す方法を模索した。
退学……は抵抗があった。中卒ニートは、社会を何も知らない僕でも、なんだか抵抗がある。
じゃあ、なんだろう?
転校か?
転勤などの親の都合なしで転校できるのは、基本的に定時制や夜間学校のようだ。
これもなんだか抵抗があった。(というか、親が許してくれないだろう)
僕はインターネットで調べ続けた。
そうしていると、高校を退学しても、高認試験に受かれば大学受験する資格を得られることがわかった。
まあ、そんなのは親が許すはずもなく。そして僕も小心者なので、世間のレールから外れる勇気なんてなかった。
親からは呆れられていただろう。僕の現状を見て。
「そんな、自分の期待通りにはいかないものだと思うよ?」と諭された
結論、傍から見れば、ただ体調不良で2日間学校を休んだだけだ。
〇〇
2日後、まるで何もなかったように登校した。
本当に何もない。
あれから考えた色々は、実現性のない妄想と化した。
そうして僕は全てを諦めて、自分の殻に閉じこもることを選んだ。
そうすることでしか、僕は自分を守ることができなかった。
唯一の救いと、そして制約は、僕には部活があったことだ。
そもそも、部活を頑張るためにと、親に懇願して学費の高い私立高校に入れてもらったんだ。
これはある種呪いだ。自分が信じた道を、自分が選んだ道を、変えることは許されなかった。
〇〇
彼と、新たに加わった同じクラスの男と待ち合わせて、三人で歩く。
この男も僕と話す時はそっけなくて、彼と話す時とはまるで態度が違う気がした。
彼らは2人で硬式テニス部に見学に行ったらしい。
僕は入学前から卓球部に入る と決めていたから、他の部活は一切見学しなかったが、彼らは色々見ているようだった。
それで、どうやらテニス部の先輩が嫌な人だったらしい。
「へぇ。じゃあ卓球部、みてみる?」
僕は何気なく、そう言った。
彼と同じ部活、というか、彼がいればうちの部活も箔がつくんじゃないか。そんなことを考えていた。
想像だにしていなかったが、こうして僕と彼は同じ部活に入ることになる。


