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大学オタサー物語①

SS(ショートストーリー)

プロローグ

なんとなく、目的もなく大学に進学した

そんな僕ももうすぐ2年生になる

学科の勉強や課題、学生生活の雰囲気にもすっかり慣れてきたところだ。順調である

まあこの当時、彼女がいないのはもちろんのこと、女性との関わりはほぼなかったが

高校3年間で人と関わることをしてこなかった(できなかった)僕はコミュニケーション能力において大きな遅れをとっていることを自覚していた

学科で知り合った人に誘われてパリピサークル(所謂飲みサー)に参加していたこともあったのだが、いかんせん僕の性格には合わず、気づいたら行かなくなっていた(もちろん楽しいこともあったけれど)

「それならオタサーに入ればいいんじゃないか?」

僕は少し遅い大学デビューを果たすため「オタサー」に入ることを決意したのだった


皆さんはオタサーと聞いて何を連想するだろうか?

オタサーとはオタクサークルの略称で、読んで字の如く「同じ趣味を持ったオタクが集まるサークル」である

ここで言う「オタク」というのは諸説あるが、一般的にはアニメや漫画、ゲームなどを好む人種を総称しオタクと定義する

この定義でいくと、僕は充分にオタクたり得る素地を備えている

深夜アニメは中学の時から好きで、高校時代は人と会話した時間よりラノベを読んだ時間の方が長い自負があるからだ

「さて…」

入学した時に貰ったサークルのパンフレットを引っ張り出してきて、ペラペラと流し見してみた

そこでオタサーにも色々種類がある事を知る

例えば漫画研究会

漫画研究会というのは便宜上の名称で、アニメや漫画についてひたすら駄弁るだけ というのが僕の漫研のイメージだったのだが(偏見が酷い)

意外と本格的に活動をしているようで、これは漫画が描けないと肩身狭いだろうな…という感じだった

他にもアニメ聖地巡礼、イラスト製作、声優アイドル、アニメ製作、遊戯王、ポケモン、特撮、2次創作、挙げ出したらきりがないほどのオタサーが存在していた

その中でも学校から公認サークルとして認められていて、部室やスペースを与えられているところはそれなりに実績があり、ちゃんと活動をしていることが大前提らしい

非公認サークルは非公認がゆえに部室などないので活動拠点は食堂や空き教室だ

しかし、僕はどうしても部室があるサークルに入りたかった

だ っ て 楽 し そ う じ ゃ ん !(単純)

高校時代に散々見た学園アニメでは、主人公とヒロインはよくわからん文化部に属していて、放課後は部室で遊んだり喋ったり青春してたろう?それに憧れたのだ

だから第一条件に部室があることを据えた

そうなってくると、ちゃんと活動をしているところに入ることが必須となる

気になるサークルを片っ端から見学したが、どこもなんだかピンと来なかった

悶々と考えながら廊下を歩いていると、見知った顔とすれ違う

「「あ」」

僕は久しぶりに、「花菜(カナ)」と再開した

第1話「ここはTCGサークルですか?」

カナとは1年前にパリピサークルで知り合った

正直、このサークルの人たちは所謂「陽キャラ」しかいなかったのだが、カナはどちらかというと僕に近しい人間だった

ノリが良く明るいのだが、時々闇を感じる

だから自然と話が合った

サークルではよく喋っていたし何度か遊んだこともある

「おぉ、久しぶりッス…」

久々に会う人というのは、どうにも距離感を掴みかねる。だから言葉尻が少しぎこちなくなった

「久しぶりじゃん。元気してた?」

「ボチボチかな… あ、カナってさ、今サークルとか入ってる?」

「いや、入ってないよ〜パリピサークルも辞めちゃったし」

そういえば僕が辞めるよりも先に幽霊部員になっていたっけ

「そうなんだ。今さ、オタサー見に行こうと思ってるんだけど、一緒に行かない?」

僕は無意識のうちに道連れを提案していた。誰かを一緒に連れて行けば、1人よりかは不安が紛れると思ったからだ

よく考えてみたら、大学でアニメや2次元コンテンツが好きな友達は佳奈くらいしかいない。適任だ

「いいね!行くわ」

道連れ相手は思いのほか乗り気であった


とはいえ僕はほとんどのオタサーを1人で回っていたため、残すところはあとひとつしかなかった

「一次創作サークルぅ?」

「うん。オリジナル作品を作るサークルらしい」

二次創作というのは既存のアニメや漫画を元に派生させて物語を作るもの。要はキャラクターや設定を借りて話を作るんだ。同人誌の大多数もこれに当たる

一次創作はその真逆で、自分で0からキャラクターや設定を考えて生み出す作品のことだ

「あんた、作品なんて作れんの?」

「うーん、まあイラストちょっと描くくらいかな」

この頃の僕はペンタブで女の子の絵を描くことに精を出していた(そんなに上手くはなかったけれど)

そんなこんなで話しながら歩いていると、部室の前までたどり着いた

「よし、あけるぞ」

ガラガラガラ-

ドアを開けるとそこには

「ターンエンド‼︎」

「俺のターン‼︎ドロー‼︎」

…えっと、開けるドア間違えたかな

「あ、今日サークル見学のお約束していた篠宮と言います」

「ほらお客さん来てるから!それしまって!」

学校の先生みたいな雰囲気の女性だな

「あはは…ごめんね。最近この人たち、カードゲームにハマってるみたいでさ。部室は散らかすわうるさいわでいい迷惑なんだよね」

「そこまで言う!?」

今まさに遊戯王に熱中していたであろうメガネをかけた男性が大袈裟に叫ぶ

「あはは…」

僕たちは苦笑いとも愛想笑いとも取れない微妙な笑みを浮かべるのであった

第2話に続く

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