入社1〜3年目の備忘録
「あの…部長。ここだけの話、係長はどうして課長にならないんですかね?」
金曜の夜。勉強ということで出張に同行させてもらった僕は、少しお高めな居酒屋で部長とサシ飲みをさせてもらっていた
酒が入ると、当然の如く職場では話せないような話題になるわけである
ちなみに部長自身はプロパー社員というわけではなく、ヘッドハンティングで入社している
「僕からすると、係長がなぜ課長じゃないのか、よくわからないんですよ」
係長は頭が良いし仕事もできると思う。そして会社の全盛期(成長期)から在籍しているプロパー社員で、所謂「古参メンバー」である。
古参組は上の役職に就いている人が多いが、係長は10年前から係長止まりらしい。他の古参メンバーとは昔からの顔馴染みで、信頼されているように見える
「合わないからだろ」
「は、はぁ…」
「四ノ宮くん。会社で出世するために必要なことはなんだと思うかい?」
「そうですね…『仕事が出来る』ことですか?」
漠然と、しかし率直に思ったことを答える
「それはもちろん大前提。けどそれだけじゃダメなんだ。表向きは人事評価で数値化した上で判断すると言うけれど、そんなのは建前。人間というのは、所詮好き嫌いで物事を判断する。特に日系企業はそれが顕著でね」
「それはつまり、仕事が出来ることに加えて『上司に好かれる』ことが必要不可欠ってことですか?」
「ビンゴ。おそらく彼は世渡りが上手くなかったパターンなんだ。だから院卒で頭がキレるにも関わらず、管理職に昇進していない。ずっと見てきたわけではないので、あくまで推測だがね」
ハイボールを片手に、部長は続ける
「上司に気に入られ、その上司が出世していけば部下も付随して上がる という流れが王道パターンかな。けれど部下は上司を選べない」
「運要素もあるんですね」
「あるよ。まあそんなの関係無しに、のし上がれる実力と自信があれば話は別だけど。そんな人は一握りだろうね」
「あと一つ付け加えるとするなら、会社の方向性に合致するキャリアを歩む ということが出世には大きく影響する」
「えっと…どういうことですか?」
「会社がこれから伸ばしていきたいと考えている事業部門、あるいは子会社かもしれないが、そういったところでキャリアを積んでいくと、会社の成長と共に自身も上がっていける可能性が高まるんだ」
「けど配属先は会社が決めるものですし、それも運要素強くないですか…?」
「あぁ。サラリーマンっていう生き方はね、自身の力だけではどうすることもできない事象も多々あるんだよ。極端な話、どれだけ死ぬ気で目の前の仕事に打ち込んで成果を出したところで、会社あるいは上長が評価してくれなければ出世はできない」
ハイボールを呑み干した部長は、少しトーンを落として語り始める
「私は元来、「冷凍食品」という領域でキャリアを築いてきた人間だった。しかし会社の辞令で、食品という大きな括りでは同じだが、全く別の商材を扱う子会社やグループ会社を渡り歩いた。不本意だったけれど」
「そういえば仰っていましたよね」
「そう。転勤族だったものでマイホームなんかもやっと最近購入できたくらいさ。さて、どうして私が転勤をすることになったと思う?」
「異動先の人手が足りなくなった、とかですか?」
「そのパターンも多いだろう。しかし私の場合は、勤務していた冷凍食品の部門が、他社に売却されてしまったからなんだ。それは会社の方向性として、冷凍食品の事業は「必要ない」と判断されたということに他ならない」
「あぁ〜…」
「もし会社が冷凍食品の事業を成長させたい意向であったなら、私もそのレールに乗りもっと良い思いができていたかもしれないとは思うよ」
部長のお話を自分の中で咀嚼すると結論はこうだ
会社組織で出世するためには、仕事「だけ」できてもダメで、逆に人付き合い「だけ」得意でもダメということなのだろう
サラリーマン(主に日系企業)は、バランス良くこなせるゼネラリストが評価される世界なのかもしれない
そして、どれだけ今が順風満帆であっても、会社の思惑によって、自身のキャリアはいとも簡単に壊れてしまう脆いものだという事だ
コメント