売れない恐怖と、どうすることもできない現実を目の当たりにした
そして自分の無力さを思い知るのである
私は晴れて大学を卒業したのだが、この時の心情を今でも覚えている
それは期待感ではなく、不安や悲観といった負の感情だった
泣き面に蜂とでも言うのだろうか。新型コロナウイルスの蔓延により、早々と社会の荒波に揉まれることになる
私が配属になったのは、会社の中で圧倒的No.1の売り上げを誇る都心店舗だ
コロナ前の全盛期は1日の売上が200万を超えるほどで、会社の利益のほとんどはこの店舗だったらしい
はてさて、2020年4月。この対面でモノを売る商売がコロナウイルスによる大打撃を受けたのは言うまでもないだろう
今まで100万/1日の売り上げを切ったことがなかった。らしい
しかし、私が配属になってからは売上100万どころか10万にすら届かない世界である
東京都心から人が消えたのだから当然か。無人のスクランブル交差点は今じゃ想像つかないが
その後販売職とは無縁の職についているが、あの頃の感覚が未だに消えてなくならない
「売れない」「赤字」「閉店」
これは私が1年間で得た感覚だ
まず、お店を営業できないことから始まる
緊急事態宣言が出ているからだ。それが解除されても、時短営業を暫く強いられた
いざ店を営業できても人が少ない
数少ないパイを奪い合うとなれば、小規模でブランド力の低い会社では太刀打ちできまい
当時の私は、会社の規模なんて関係ない。自分の行きたい場所で自分らしく頑張ろうと。お花畑なメルヘン野郎だった
この頃の体験が根強くインプットされたせいで、私は大手病になっているのかもしれない。そしてより規模の大きい会社へと渡ってきた
赤字が続けば店は存在意義を失い、閉店する
配属され、そして閉店した店舗たちを思い、私は何を感じるのか
それぞれたった1〜数ヶ月程度の勤務だったので、他の社員に比べたら愛着は薄かったかもしれないが、いい気分ではなかった