社会人6年目です。新卒入社した会社を1年で退職。現在は転職した会社で働いています。あと、YouTubeに動画投稿してます。
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彼と彼女は利用し合う❷「邂逅」

SS(ショートストーリー)

※この物語はフィックションです。実在する団体・人物とは関係ありません

※前回①の続きです


「あ、ブロックされてるわ」

数ヶ月前に何度か遊んだ女は、用済みとなった俺に興味を失ったようだった

浮気がバレて彼氏を失うことが怖くなったのか、はたまた俺に飽きたか。知る由はないのだが

悲しきかなこれがキープくんの宿命か

「なんつーか、世の中の女が恐ろしいよ」

彼女らは平然と、自身が潔白であるように振る舞う。コテコテの嘘で塗り固める

けれど表面上は見分けがつかないのだからタチが悪い。一体、何を信じれば良いというのだ

俺は彷徨っていた。別に道に迷ったわけじゃないが

こうして被害者気取りの感傷に浸るあたり、あの女と本質は変わらないのかもしれない

〇〇

大学に入学し、さまざまな洗礼を受けた

「ギャップ」とでも称せば良いだろうか

まず手始めの洗礼を紹介しよう。それは大学に入ると彼氏彼女の仲でなくとも下の名前で呼び合うこと

呼ぶのも呼ばれるのも小っ恥ずかしいったりゃありゃしない。まあ直ぐに慣れたが。

同世代の女子に下の名前で呼ばれたのは、実に小学生ぶりの出来事であったし、自分の存在が異性に認められた感じがして案外嬉しかった

こうした様々な洗礼を通過して、俺は人生で初めて「女友達」なるものができた(無論、小学生時代は除く)

これが最初で最後の女友達となるのは知る由もないのだが

異性の友達の定義は諸説あるが、俺は下記のように定義している

・お互いを性的欲求の対象として見ていない(身体の関係がなく、未来永劫その可能性はない)

・気を使うことなく遊びに誘える

・LINEやチャットで即レス会話を気にせずできる

・二人きりでいても苦痛でない

・会話が無くても気まずくない

・話題を頑張って探したり、振ったりすることがない

要するに同性の友達と同様、フラットで心地よい関係性であることだ

さて、そろそろ本題に入ろうか

まだ大学に入学したばかりの頃。「カナ」とは所謂ウェーイ系サークルで知り合った


1年前──俺は大学のとあるサークルの新入生歓迎会(BBQ)に参加していた

5月だというのに照りつける太陽はとてつもなく暑い。暑い、暑い…!!

この頃の俺は厨二病じみた言動も少なくなく「群れない自分」というものに矜持(という名の強がり)を持っていたので、サークルに入る気はなかった

…のだが、入学時に話しかけられた男に誘われ、半ば強制的に参加する事になったのがこのイベントだ

「…帰りたい」

俺は生粋の人見知りであり、知らない人がたくさんいるこの空間は耐え難いものであった

「推定100人以上はいるだろうな・・・」

みんな酒を飲んで浴びてははしゃいでいる

酒を浴びるとは読んで字の如く。水鉄砲の中に酒を入れて遊んでる奴もいた

ここはただの「飲みサー」であるようだ

高校時代のDQN達を思い出してしまい、俺は軽くノイローゼを起こしそうになる。どこの世界にもこういう輩はいるのだ。ただ、だいぶマイルドだなとは感じるが。

そうか、これが大学デビューというやつなのか。何も有り難くはないが、DQNの多い高校だったおかげか、割とすんなりと受け入れられた。

先輩も話しかけてくれたし、そういう気遣いは高校と違うと思ったね(社交性がオトナにアップデートされた感じだ)

一つ勉強になった。そういうことにしておこう

とりあえず一緒に来た野郎3人、隅の方でちびちび肉をつまんでいた。手持ち無沙汰というか、何となく時間が過ぎるのを待っているような感じだった。そんな時。

「あの〜、みなさん1年生なんですか?」

不意に話しかけてきたのは、茶髪ショートヘアの女性だった。Tシャツにジーンズというラフな格好で、紙コップには多分烏龍茶。

なんというか、舞台の演技かってくらいハキハキ喋る人だな

「1年です。えと・・・」

「私も1年生なんです〜。仲良くしていただけたら嬉しいです。あ、カナって言います」

この社交的というか、貫禄ある感じで同じ1年なのかよ・・・てっきり先輩かと思った。

そんなこんなで特に大きな出来事もなく、その日のバーベキューは幕を閉じるのであった

可もなく不可もなし。これがカナとの邂逅である。


時は進み、新入生歓迎会から一年が経つ頃

「なんかさ、甘いもの食いたくね」

「いいね。行くわよ」

俺はノリと思いつきで行動するタイプなのだが、こんな身勝手な話に乗ってくれるカナは楽だ

暇な文系大学生にとって、このような交友関係は大学生活を充実させる、もとい退屈凌ぎには大事なのかもしれない

〇〇

お目当ての星座パフェとやらをつまみながら駄弁る

読んで字の如く、各星座をモチーフにした「映えスイーツ」がそこに有る

若い男女が2人、カフェで談笑する様は側から見ればデートなのだろう。しかし俺たちにその感覚はなかった、と思う

ただ純粋に友達と食事をするだけで、さした意味はないというか。たまたま暇だったからとか、バイトまでの時間潰しとか。

「てか、その服いいな。そして高そう」

カナは白いTシャツに、レオパード柄のジャケットを羽織っていた。柄ものなんて珍しいなと思ったが、不思議と似合っている。

「いいでしょ。いうても1万5千円くらい。豹柄好きなんだけどさ〜、いまいち誰も共感してくれないのよね。あんた見る目あるじゃない」

カナは少し嬉しそうに、けれど戯けるような声音。

「俺はファッションに関して、いいと思えば素直に褒めるからな」

「でた、自称ファッションリーダー(笑)ね」

別に大した話をするわけではないのだが、それもまた変に気を遣わなくて楽というか、心地いいんだ

〇〇

「てかさ、なんであの展開であのキャラ退場させんの?意味わかんなくない?」

カナはプラカップのストローをかみながら、例の深夜アニメについて熱弁していた。

周りのカップルたちは甘い空気をまとっているのに、俺たちのテーブルだけ空気が少し違う。熱くて、砕けていて、でもなぜか心地いい。

「まあ、たしかに雑だったけど、あの演出で泣いた人もいるらしいよ?」

「泣くのは自由だけど、私は納得いかない。むしろ私が泣きたいわ」

そう言って小さくため息をついたあと、カナはふと口をつぐんで窓の外を見た。

その横顔が意外と物憂げで、普段の強気なキャラとは少し違って見えた。案外根は根暗というか、真面目なんだよな。

俺が何故カナと仲良くなったかというと、1番の理由はアニメの趣味が合うことだ。もはや男友達よりも

そもそも今までアニメが好きな女子に出会ったことがなかったので、それすらも新鮮だった

俺はこの関係性を気に入っていたし、ある種優越感を感じていたのかもしれない。気の合う女友達がいるという現状に

俺たちはただアニメの話をして、バカみたいに笑って、どうでもいい話で時間を潰しているだけ。

俺にとってカナの存在は好都合だったし、おそらくカナにとっても同じだったのだろう

ずっとそれだけでよかったのだ

❸に続く

彼と彼女は利用し合う❸ 「不適」
※この物語はフィックションです。実在する団体・人物とは関係ありません前回❷の続きです必要なときに声をかければ、なんとなく会って、それなりに楽しい時間を過ごして深く干渉しすぎることもなく、...

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