※この物語はフィックションです。実在する団体・人物とは関係ありません
※前回①の続きです
「あ、ブロックされてるわ」
数ヶ月前に何度か遊んだ女は、用済みとなった俺に興味を失ったようだった
浮気がバレて彼氏を失うことが怖くなったのか、はたまた俺に飽きたか。知る由はないのだが
悲しきかな、これがキープくんの宿命か
「なんつーか、世の中の女が恐ろしいよ」
彼女らは平然と、自身が潔白であるように振る舞う。コテコテの嘘で塗り固める
けれど、表面上は見分けがつかないのだからタチが悪い。一体、何を信じれば良いというのだ
俺は彷徨っていた。別に道に迷ったわけじゃないが
こうして被害者気取りの感傷に浸るあたり、あの女と本質は変わらないのかもしれない
〇〇
大学に入学し、さまざまな洗礼を受けた
洗礼という名の「ギャップ」とでも称せば良いだろうか
まず手始めの洗礼を紹介しよう。それは、大学に入ると彼氏彼女の仲でなくとも下の名前で呼び合うこと
呼ぶのも呼ばれるのも小っ恥ずかしいったりゃありゃしない。直ぐに慣れたが。
同世代の女子に下の名前で呼ばれたのは、実に小学生ぶりの出来事であったし、自分の存在が異性に認められた感じがした。
案外嬉しかったのは内緒だ
こうした様々な洗礼を通過して、俺は人生で初めて「女友達」なるものができた(無論、小学生時代は除く)
そしてこれが最初で最後の女友達となるのは知る由もないのだが
異性の友達の定義は諸説あるが、俺は下記のように定義している
・お互いを性的欲求の対象として見ていない(身体の関係がなく、未来永劫その可能性はない)
・気を使うことなく遊びに誘える
・LINEやチャットで即レス会話を気にせずできる
・二人きりでいても苦痛でない
・会話が無くても気まずくない
・話題を頑張って探したり、振ったりすることがない
要するに同性の友達と同様、フラットで心地よい関係性であることだ
さて、そろそろ本題に入ろうか
まだ大学に入学したばかりの頃。「カナ」とは所謂ウェーイ系サークルで知り合った
1年前──
5月だというのに照りつける太陽はとてつもなく暑い。暑い、暑い…!!
俺は大学のとあるサークルの新入生歓迎会(バーベキュー)に参加していた
この頃の俺は厨二病じみた言動も少なくなく「群れない自分」というものに矜持(という名の強がり)を持っていたので、サークルに入る気はなかった
…のだが、入学時に話しかけられた男に誘われ、半ば強制的に参加する事になったのがこのイベントだ
「…帰りたい」
俺は生粋の人見知りであり、知らない人がたくさんいるこの空間は耐え難いものであった
「推定100人以上はいるだろうな・・・」
みんな酒を飲んで浴びてははしゃいでいる
酒を浴びるとは読んで字の如く。水鉄砲の中に酒を入れて遊んでる奴もいた
ここはただの「飲みサー」であるようだ
高校時代のDQN達を思い出してしまい、俺は軽くノイローゼを起こしそうになる。どこの世界にもこういう輩はいるのだ。ただ、だいぶマイルドだなとは感じるが。
そうか、これが大学デビューというやつなのか。何も有り難くはないが、DQNの多い高校だったおかげか、割とすんなりと受け入れられた。
先輩方も話しかけてくれたし、そういう気遣いは高校と違うなあと思ったね(社交性がオトナにアップデートされた感じだ)
一つ、勉強になった。そういうことにしておこう
とりあえず一緒に来た野郎3人で、隅っこの方でちびちび肉をつまむ。味はあまり覚えていない
「あの〜、みなさん1年生なんですか?」
話しかけてきたのは、茶髪ショートヘアーの先輩っぽい女性。なんというか、舞台の演技かってくらいハキハキ喋る人だな
「1年です。えと・・・」
「私も1年生なんです〜。仲良くしていただけたら嬉しいです。あ、カナって言います」
この社交的というか、貫禄ある感じで同じ1年なのかよ・・・
そんなこんなで特に大きな出来事もなく、その日のバーベキューは幕を閉じるのであった
これがカナとの邂逅である。
「なんかさ、甘いもの食いたくね」
「いいね。行くわよ」
俺はノリと思いつきで行動するタイプなのだが、こんな身勝手な話に乗ってくれるカナは楽だ
暇な文系大学生にとって、このような交友関係は大学生活を充実させる、もとい退屈凌ぎには必須なのかもしれない
〇〇
お目当ての「星座パフェ」とやらをつまみながら駄弁る
読んで字の如く、各星座をモチーフにした「映えスイーツ」がそこに有る
側から見ればこれはデートなのだろう。しかし俺たちにはその感覚はなかった、と思う
ただ純粋に友達と食事をするだけで、さした意味はないというか。たまたま暇だったからとか、バイトまでの時間潰しとか。
「てか、その服いいな。そして高そう」
「いいでしょ。いうても1万5千円くらい。豹柄好きなんだけどさ〜、いまいち誰も共感してくれないのよね。あんた見る目あるじゃない」
カナは少し嬉しそうに、けれど戯けるような声音。
「俺はファッションに関して、いいと思えば素直に褒めるからな」
「でた、自称ファッションリーダー(笑)ね」
別に大した話をするわけではないのだが、それもまた変に気を遣わなくて楽というか、心地いいんだ
俺が何故カナと仲良くなったかというと、1番の理由はアニメの趣味が合うことだ。もはや男友達よりも
そもそも今までアニメ好きの女子に出会ったことがなかったので、それすらも新鮮だった
俺はこの関係性を気に入っていたし、ある種優越感を感じていたのかもしれない。気の合う女友達がいるという現状を
俺にとってカナの存在は好都合だったし、カナにとっても同じだったのだろう
こんな関係性は2年くらい続いた
❸に続く